無償にとにかく軽い本が読みたくなって、徘徊している内にめぐりあったのが「インディゴの夜」でした。
第十回創元推理短編賞受賞作品らしい。
ホストクラブを主体として展開される推理小説ってのが、なかなか斬新で面白かった。
しかも軽いしね!(ネタバレあり)
「インディゴの夜」
ライターの高原晶と編集者の塩谷が、サイドビジネスとして経営する「club indigo」。
そこは従来のホストクラブみたいではなく、クラブのような雰囲気のホストクラブで話題を呼んでいる。
そんな折、人気ホストの一人TKO(タケオ)の指名客が殺されてしまう。しかも、TKOに容疑がかけられてしまう。
そんなわけで犯人探しに乗り出した晶たち。
ホスト達の情報網などを駆使して、時々はライターのツテを駆使して犯人を探し出す。
すると、犯人は以外にも身近な人物だった・・・
「原色の娘」
ホストの一人ジョン太は、昔のバイト先の店長から頼まれて、店長の娘祐梨亜を預かることになる。
しかし小学校5年生のこのマセガキは、とうていジョン太の手に負えることなく、晶は押し付けられることとなる。
そんな折に、club indigoの敵であるエルドルドのナンバー1ホスト・空也に出会ってしまう。なんとかして一緒にプリクラをとりたい祐梨亜。お金を必死でかき集めて、忽然と姿を消してしまう。
必死で探す晶たちは、間一髪のところで祐梨亜を助ける。
「センター街NPボーイズ」
渋谷区長の娘が、ナンパされハメ撮りされ、それをネタにされてゆすられた渋谷区長。
ツテをたどって頼られてしまった晶たちは、昔ナンパ師だったホスト・犬マンの助けを借りて、まずそのナンパした男を捜す。
彼もナンパ師だったらしく、姿を消しているらしい。しかもそいつを追う、謎の男3人組の姿も浮上してきて・・
「夜を駆る者」
かつてclub indigoで働いていたのに、突然辞めてしまったBINGOから、「助けて」という電話がくる。
そしてその夜には、がりがりに痩せたBINGOの指名客だったキャバ嬢が現れ、助けを求めてきたのだが、黒い車に連れ去られてしまう。
その上、次の日にはBINGOの死体が発見される。
そんなこんなで捜査を勝手に始める晶たち。
BINGOがindigoを辞めた後に勤めていたホストクラブ・クロノスに進入捜査をしてみた結果・・・
ホストクラブが探偵まがいなことをすること以外、すべてがありきたりな設定でした。
舞台が新宿なのも、性同一障害が現れたり(インディゴの夜)、不仲な両親に満たされない反抗的な子供(原色の娘 )に、児童ポルノだとか(原色の娘)、やくざの依頼を無視ししてもっと儲けてやろうと目論んだのがにっちもさっちもいかなくなる(センター街NPボーイズ)なんて、定番中の定番だし、ホストに入れあげた結果、シャブ漬けにされて売春させられる(夜を駆る者)ってのも、とうに出てきた題材。
でもそれらをスピーディーに、オリジナルの部分を活用して使っているので、面白く感じたのでしょう。
しかもノリが軽い軽い。
特徴を聞くとTKOは次のように答えた。…(中略)…
(p32-33)
「ぶつかった時に思ったんだけど、すげえ貧乳だった:
「ヒンニュウ?」
「晶さんのことですよ」
ジョン太が明るく答えた。怪訝な顔をしている私に、アレックスは笑いをこらえながら説明してくれた。
「胸の小さい女のことです」
「・・・・・・」
相手はガキ。そう自分に言い聞かせ話を続けた。
万事がこの調子。
まさにこういう本が読みたかったんだよね!と満足でございます。
続きが読みたい!
<加藤実秋 「インディゴの夜」 2005年 東京創元者>
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