子どもの頃に読んでたら相当怖かったろうなぁ:都筑道夫 「幽霊通信 都筑道夫少年小説コレクション1」


果たしてどういういきさつで自分の「読む本リスト」に入ったのか、すっかり忘れてしまったが、確かWikipediaで何かを調べてて行き当たったかなんかで加えた気もする「都筑道夫少年小説コレクション」。

都筑道夫という名は、実はその時に初めて知って(推理小説好きとしてはアレだろうけど)、なんでか少年小説から読んでみたのだが、割と面白かった。
というか少年小説と銘打ってるだけあって、主人公は少年少女だし、文体もやさしいけれども、内容としてはしっかりとした推理小説だった。

“幽霊通信”とだけあって、本書に集められているのは(本書は短編集)幽霊だとかお化けを題材にしたお話。といってもオカルトな話ではなくて、幽霊/お化けが出るという噂が出回る→探偵役が調べる→幽霊/お化けと思っていたのは人間の仕業で、裏には犯罪が起きていた、というスタイルがどの話にも貫かれていた。

といっても、前述した通り子供だましのものではなくて、ホラーっぽい要素も含めつつ、トリックもしっかりしていたので、大人でも楽しめる。
本書には「幽霊通信」「耳のある家」「砂男」「座敷わらしはどこへ行った」という話が入っていて、その中の「幽霊通信」は全12話のショートショートである。そして一貫して民族学を専攻していて、お化け博士と呼ばれている和木俊一が探偵として登場する。
メモ程度に話を列挙してみると;

「幽霊通信」・・・和木俊一が下宿している所の美香ちゃんが主人公

・第一話 一本杉の家
 誰もいないはずの家に、女の人が寝ている。
・第二話 二階にうつるかげ
 夜、ある二階に影がうつる。影は日によって鬼であったり女であったりする。
・第三話 三時三分にどうぞ
 交通事故で死んだと思った美香の友達から、「遊びにいらっしゃい」という電話がくる。
・第四話 スペードの4
 美香の友達の父親宛に、破られたスペードの4のカードが届けられる。
・第五話 五色のくも
 5色の蜘蛛が現れる。
・第六話 ぼうしが六つ
 提灯屋さんの枕もとに現れるシルクハット。
・第七話 七福神の足あと
 七福神が描かれていた掛け軸が、もぬけの殻になり、しかもその前に死体、そして七福神の足跡。
・第八話 8時のない時計
 うらさびれた邸。異様な家族。亡くなった姉が帰ってくるという。
・第九話 おしの九官鳥
 美香の友達の父親が幽霊に襲われて亡くなる。
・第十話 十字路の日を消すな
 十字路の電気が消え、壁には謎の文章が現れ、そしてすぐ消える。
・第十一話 十一才の誕生日
 怪奇現象が次々に起こり病気になってしまった、美香の友達。
・第十二話 十二ひとえの人形
 十二単の人形が涙を流すといって和木のもとへ調査依頼がくる。

「耳のある家」

学者である父親の仕事の関係で、父親の友達の家に預けられたルミ。
非常に奇妙な家で、監視されている気がしてならない。
実はその家でニセ札つくりと、合成皮膚の研究がなされていた。

「砂男」

ゆみ子の兄が突然消える。
その後ゆみ子は、兄を捕まえたという砂男に出会い、兄を返してほしくば“ものいうすな”を探してこい、と言われる。
その砂は実はヘロインで・・・

「座敷わらしはどこいった」

東北にやってきた由美。そこで座敷わらしの話を聞き、土地の子と一緒に座敷わらしを見つける。
座敷わらしが消えたという方向に行ってみると、そこには死体が!そして実は座敷わらしは、土地の子が由美のために用意した、本物の男の子で、その子の姿がない。
この話がただの子供だましじゃない、ということがよく現れている一節がある。
「砂男」の中で麻薬が出てくるのだが、そこで;

「ゆみ子ちゃん、きみのような子どもに、こんな話をするのは、早いかもしれない」
 と、和木俊一は、ゆみ子を見つめながら、いいました。
「しかし、この世の中には、そこにいる砂男なんかより、百倍も千倍もおそろしい、手をふれてはいけないものがある、ということを知っておいたほうがいいような気がする。だから話すんだが、薬の中には病人を助けるが、健康な人には毒になるものもあるんだ。麻薬がそうだ。」

(p258)

というシーンがある。
ただ子ども扱いして目をそらせないで、きちんと向き合っているってのが良いなーと思った。
これを子どもの頃に読んでたら、相当はまってただろうな、と思った。

都筑道夫 「幽霊通信 都筑道夫少年小説コレクション1」 2005年 本の雑誌社

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