本についてるしおり(紐状の)があまりに短くて、使いにくかった:真藤順丈 「庵堂三兄弟の聖職」


ジャケ買いならぬ、ジャケ読みした「庵堂三兄弟の聖職」。
ブックオフで目を引いた表紙。絵が気に行ったのでよっぽど買おうかと思ったけれども、“いや待てまて、これで面白くなかったらどうする”という、ケチ理性が手伝って手を出さず。

内容を確認しようと思ってAmazonで調べたら、ホラー大賞を受賞した作品だそうな。“ホラー!?”と手を引っ込めようかと思ったら、Amazonの書評に「全然怖くない」「ホラーっぽくない」とあったので、“じゃあ”と手を出すことにする。
でもやっぱりAmazonの書評で“面白くない”というコメントもあったので、財布の口を開けるのが躊躇われ、図書館で借りるハメになったのだった・・・

さて、そんな経緯で読んだ「庵堂三兄弟の聖職」、どうだったかというと・・・
うむ・・・ ま、買わなくて良かったかな。300円くらいだったら、表紙絵にひかれて買っただろうけど(ヒドイ)。

一応、フォローを入れておくと、決して面白くなかったわけでは非ず。一気に読み切ったし。
ま でも有体にいえば、私の好みではなかったと。感じとしては、なんとなく舞城王太郎に似てるかも。本当になんとな~く、だけど。そして言うまでもなく、舞城王太郎の方がずっと上手いし、面白いけど。

そんなこんな「庵堂三兄弟の聖職」、あらすじはどんなかと言うと。
庵堂家の家業は、亡骸から生活用品やら財布やらを作る「遺工師」。葬儀屋と提携を組み、遺族から依頼があった場合は、死体を焼かないで解体し、依頼品に加工するのだった。
割と珍しい職業だけど、マイケル・ジャクソンが亡くなった時に、マイケルの遺骨でダイアを作る・作らないの話が出て、そういうビジネスがあるとなんとなく知っていたので、設定に目新しさがなかった。もしそれを知らなかったら、もうちょっと意外性があって面白かっただろうに、とちょっと悔やまれる。

閑話休題。

三兄弟は上から正太郎、久就、毅巳。父親は亡くなり、正太郎が遺工師の後を継いでいる。
久就は東京に出てしまっていて、父親の七回忌に久しぶりに実家に帰ってくるところから話は始まる。
老夫婦の妻の全身加工。交通事故で亡くなったやくざの愛娘の剥製。
この二つの仕事をベースにしながら、庵堂兄弟の出生の秘密、庵堂家の暗黒時代の話(やくざと癒着してた)、汚言症の毅巳の破壊的な恋の行方が描かれている。一旦はバラバラになったかのような庵堂三兄弟だが、最後に再結成する未来を予兆する形で終わる。
散々文句言っているけれど、文章もそんな悪くないし、出だしも;

 ウカツ。また死体〈ホトケ〉と一緒に寝てしまった。
 作業台の上で目覚めた正太郎は、「ああだあぁ……」とうなりながら上体を起こした。
 重たい首を左右にしならせる。目覚めしなの散りぢりになった思考をとりまとめながら、しばらく<工房>を、六基並んだ琺瑯製の作業台をぼーっと眺めた。

(p3)

とつかみはいいと思う。
でもな~んか“あと一歩”感がぬぐえない。
例えば、登場人物の狂気じみた感じとか。生ぬるいというか、ありきたりというか。
確かにAamazonの書評であった通り、全然怖くないし、死体を扱うからグロいかと思いきや、そこまでじゃない。ま それはそれでありかな、とは思うけど、もうちょっと人々の狂気を書きこんだら面白かったかもしれない。
と言うわけで、図書館で借りて正解でした。

真藤順丈 「庵堂三兄弟の聖職」 平成20年 角川書店

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