山本容子さんの絵もまたいい:石田千 「月と菓子パン」


どこかの書評(多分三浦しをんさん)で、描かれている食べ物がおいしそう、みたいなことが書かれていたので、食い意地のはった私はいそいそと「読む本リスト」に付け加えた「月と菓子パン」。
確かにおいしそうだったけど、それより文章の美しさ、というか作者の感性に敬服した。というと堅苦しいけど、本当に“ははーっ!”とひれ伏すくらいすごいな、と思った。

石田千さんの日常がつづれれたエッセイなんだけど、そして本当に何気ない日常の一こま一こまが描かれているんだけど、はっとさせられることが多い。
例えば;

 赤ちょうちんの、すりよるような優しさがすこし重たく感じるときには、蛍光灯の箱のなかにはいって、中華まんじゅうを買って、また歩く。
 入れ違いに出て行ったおばあさんが、肉まんをほおばりながら踏切を渡っていった。まんじゅうの湯気も、おばあさんのあとについて、渡っていった。

(p75)

なんて表現もなんかいい。
特別な出来事があるわけではないので、これといった内容をはっきり覚えているわけじゃない。
でも“いいもの読んだな”という感覚が尾を引く。
これは手元に持っておいて、何かの折にふと読んでみるのがいい本なのかもしれない。


石田千 「月と菓子パン」 2004年 晶文社

コメント

  1. まりりん より:

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    素敵な作品だったようで、何よりですよ。石田千さん、先を越されちゃったね。私もリストに入れてたんだー。これから読むけど、楽しみ楽しみ。
    ところで、勝田文さんのdaddy long legsも可愛らしい話だよね。小説も読んでみたけど、また趣が違ってよかった。

  2. nizaco より:

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    あ~リストに入ってましたかー!
    実はまりりんにぴったりだと思っておススメしようかと思ってたんだ~~
    なんかね、文章の感じといい、まりりんにぴったりだよ!!同じ空気を感じるのだ。
    勝田文さんは友達にずっと勧められてて、表紙の着物の絵にひかれて買ってしまった~ 他にも彼女の作品欲しくなったヨ

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