表紙の八雲、中学生より若干幼く見える:神永学 「心霊探偵八雲 SECRET FILES 絆」


気づいたら出てた“心霊探偵八雲”シリーズ。
タイトルからして番外編チックなのか。八雲が中学生の時のお話。

本題に入る前の話が逸れるが、文庫本の帯に「コミックも発売!!」とあって、中にもちらし(っていうの?)が入っていたので読んでみたら、なんか八雲の設定が微妙に違うみたいですね。何せ美青年。

おお~
前に出てた方の漫画を立ち読みしたことがあるけど、そんな設定じゃなかったような・・・
というかなんでそんな何度もコミック化するんだろう・・・とちょっと疑問。そしてどうせなら鈴木康士氏に描いていただきたい!!! それかそんな雰囲気の人に!
と言いつつ、新しいほうの漫画にもめっちゃ興味ある私。でも近所の本屋にはないんだ。
はっ なんか「八雲シリーズは絵につられて買ってるんだぜ~」的なこといってたくせに、妙に収集癖を発動させてないか!?

本題に戻ると。
今回は全面中学生八雲のお話。
一応晴香が一心と後藤刑事から話を聞いているという形はとっているが。
そしてそれで知ったけど、後藤刑事から命を助けてもらった後、八雲と後藤刑事はこのお話に出てくる事件まで会っていなかったらしい。
中学生の八雲はどんなかっていうと、ま、想像にかたくない。世の中を憎んでいるような冷たい奴だった。

それでもって同級生に絡まれて殴られようと、無反応なもんだからなめて見える。
本書には2話入っていて、1話目には産休から戻ってきて唯一、八雲を気に掛ける女教師・高岸明美が登場する。彼女は一心が学生だったときに家庭教師をしていた生徒でもあり、一心と再会してちょっといい感じになる。そして彼女は、八雲の母親のように、赤目の男に乱暴されて子どもを産んでいたという事実も明るみになっていく。
というのは徐々に出てくることで、本筋はというと、八雲に絡んでいたクラスメイトのグループが肝試しをして、そのうちの一人が霊に取りつかれてしまう、というもの。
それと同時進行で、後藤刑事と宮川刑事は産婦人科の不正を暴こうと捜査を続けている。
その二つの事件が最後につながったとき、悲しい結末となる。

その結末には不覚にも涙してしまった。
何よりも一心が良い人すぎる~~ 明美先生の死亡日付を後藤刑事たちに頼むのは、感情的な理由だけでなく、明美先生の娘・奈緒を引き取るためってのがまた……

1話目で後藤刑事と再会するの巻だったけれど、実は後藤刑事の捜査の手伝いをしたのは、第2話の事件が初めてだった。
その事件というのが、池に浮かぶ他殺死体。鑑識が現場の写真を撮ったら女の子の霊が写っていて、しかもその霊こそが後藤刑事が見た霊でもあった。
ということで八雲に協力を仰ぐ。

「俺を、利用しようってのか?」
「悪いか?頭の良い奴は、せっせと書類仕事に精を出す。俺みたいな肉体バカは、走り回る。人それぞれ、自分の特技を活かす。それが社会ってもんだろう」
「何が言いたい」
「お前だってそうだ。見えるんだったら、それを活かせよ。特別なことじゃねえはずだがな」

(p298)

というくだりを読んで、後藤刑事が“霊が見えるのは特別じゃない”って思ってるからこそ、この後八雲は捜査に協力していくんだろうな、と思った。

というか、そういうのが割とあからさまよね、この小説。
あのへっぽこ刑事(名前忘れた。後藤刑事と一緒にいるやつ)がいない分、今回は面白かったけれど、“八雲の悲しい境遇/八雲のつらさ←すべてを受け入れる人が現れ、八雲は心を開いていく”という図式がまたもやあからさまに提示されていて、どうかなと思う。

というか、このシリーズ、そのパターンばっかだよね。八雲がやったらめったら悲劇のヒーローのようになっていて、そこがちょっとうざいな。八雲、というより八雲の周りの人物の描き方がちょっとよろしくないんでは。

なぁ~んて文句を言ったところで、次作も買うんでしょ!私!


神永学 「心霊探偵八雲 SECRET FILES 絆」 平成21年 角川書店

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