表紙の彼はなかなかのイケメンじゃないのぉ~:ジョシュ・バゼル 「死神を葬れ」


電車の吊広告か、はたまたどこかの広告で目を引いたタイトル「死神を葬れ」。
普段はできたら翻訳物を読みたくない人だが、医療ものだから原書で読むのも大変そうだし、それで面白くなかったら最悪、ということで翻訳されたものを読んだ。
読んでみて、まぁ、翻訳されたのを読んで正解だったかも。
“最後のどんでん返しがすごい”とどっかで読んだはずだったのに、どこにどんでん返しがあったのでしょうか?って感じだったし、リアルなERの描写は、痛いものが嫌いな私としては時に読むのが苦痛だった。
と文句を言ったところであらすじを書くと、

主人公は研修医。ものすごく忙しいなか、薬でハイにしつつなんとかこなしている。
そこへマフィアの患者と出逢ったところから、彼の生活が一転する。
というのは彼には隠された過去があって、マフィアに祖父母が殺され、その復讐を果たすのをきっかけにマフィアの世界に入ってしまう。

といっても盃を交わす(ってマフィアにはあんま向いていない言葉かねぇ)ことはなく、マフィアの弁護士をしている友達の父親に頼まれて、ヒットマンになるくらい。
というような過去と、めまぐるしい病院の一日が交互に描写されていく。

なんとなく舞城王太郎の「煙か土か食い物」みたいのを連想していたのだが(薬でキメつつ忙しい研修医=忙しくで妙にハイテンションな医者という連想)、当たり前のことながらぜーんぜん違った。
ぶっ飛び度でいったら、「煙か土か食い物」の方がはるかに上をいくから、主人公が“実は昔ヒットマンだった”という設定も、“ま ありかな”とすんなり受け止めてしまった自分が悪いと思う。そこまで面白いと思えなかったのは。

ただちょっとぶーたれさせていただくと、主人公の一人称で話が進むのだが、ヒットマンと思えないくらいの好青年的話口調ってのが、物語の面白さに水を差したと思う。
どうやら屈強な体型をしているらしい主人公が、「僕」って言うなんておかしくないか!?と思うのは私だけ?

とここまで書きながらパラパラ読み返したら、真ん中の部分をすっ飛ばしてたことに気付いた!なんてこったい!!
申し訳ない! でももう読み直す気にはやっぱりなれないからこの辺で終わりにしておくよ!
文句を言い続けたけどお詫びに面白かった文章をメモって終わりにしまする…

(非常につまらない症例検討会のシーンにて)
 壁伝いに苔が生え広がっていく幻覚が見えたあと、また眠りに引き込まれそうになった。

(p136)

ジョシュ・バゼル 「死神を葬れ」 池田真紀子訳 平成21年 新潮社

コメント

  1. 麻里 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >壁伝いに苔が生え広がっていく幻覚が見えたあと、
    納得!居眠りしそうになる直前の瞬間を、文学的に表現するとこんな風になるんだね。面白いフレーズの紹介、ありがとうです。そのうち、退屈だな~と思うと、この表現を連想するようになる気がするよ。

タイトルとURLをコピーしました