冬に読みたかった一冊:辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる 上」


またもや読書会の人に薦められて。
実は辻村深月の作品を偶然、違う時に薦められたのだが、まずは一回目の時に薦められた「冷たい校舎の時は止まる」。
うぐぐぐ…なことに、二回目の時に、「前の読書会で『冷たい校舎の時は止まる』を薦められたんですけど、その時に怖いって聞いたんですが、怖いんですか?」と聞いたら、ちょっとしたネタばれをされてしまった。
ま そんな大したことなかったけど。
そして、それのせいなのかは分からないが、全然怖くなかった。
ざっとしたあらすじは、高校校舎に生徒8人が閉じ込められてしまう、しかもそれは異空間っぽい、という話なのだが、確かに“学校校舎+閉じ込められる”という図式はそのままゾクッとするものだろう。
でもなんでかな。全然怖くなかった。

閉じ込められたのは男女8人。
8人はクラス委員でよくつるむ仲間だったし、あることをきっかけに団結力が高まったグループだった。
そんな彼らが通う高校は県下一の進学校である。

ところがその年の文化祭のときに、同学年で同じクラスのクラスメートが皆の前で飛び降り自殺をしてしまう。
どうもこの自殺が、この奇妙な状況に関係があるみたいなのだが、不思議なことに誰一人、その自殺者の名前や顔が思い出せない。
彼らが出した予測は、その自殺者が自分の意識の中に8人を閉じ込めたのではないか、ということだった。

それの裏づけとなったのが、まだこの状況が把握できたいない時に見つけた、皆が慕う先生の机に貼ってあった写真だった。それは先生を中心にして彼ら全員が写った写真だったのだが、その写真には7人しか写っていなかったのだ!
誰が写っていなかったのか確認しようと戻ってみれば、その写真はなくなっている。
ではこの8人の中に自殺者がいるのか……
そうこうしているうちに、一人ひとりが、その自殺者の怨念みたいのにとり殺されていってしまう。
しかし“死ぬ”といっても実際には死体として残るのではなく、石膏のような人形となってしまうのだが、どうやらそれで現実の世界に戻っているらしい。
でもそこに残るおびただしい血。

その残忍さに、皆、なんとかそれから回避しようとするのだが、なんの法則があってか、次々にいなくなってしまう。
そのいなくなってしまう時に、それぞれの悩みやら生い立ちやらが克明に描かれているのだが、その部分が割りと長かった。
本書は上・下の二冊に分かれているのだが、実際の事件っぽいシーンは短く、この回顧シーンでほぼページを割いているのではないかと思うくらい。
それが良い結果となるのかは、最後まで読まないと分からないだろうが、今のところは読むのを辞めてしまうような長さではなく、むしろ止まらない感じなので良しとしよう(なんて)。


辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる 上」 2007年 講談社

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