どの若旦那もめそめそと草食男子だ!:古今亭志ん朝 「志ん朝の落語1 男と女」


「志ん朝の落語」の1がないと思って2から借りたのに、その後図書館のサイトで検索したら何故かあって、慌てて借りた1。
テープおこしなところが慣れてきたのか、すいすい面白く読めた。
全体的には、2巻目の人情話のほうが面白かったが。
今回、ちょっと面白い悪態を見つけたので、2つ書き出してみる;

ああ、嫌な長兵衛づら、ちいちいぱあぱあ数の子野郎

(p228)

親ばかちゃんりんだ。

(p278)

どっちもいつか使ってみたい。なんて。
本書に出てきた話のうち、いくつかは聞いたことあるタイトルだった。
というのも、以前やっていた「タイガーアンドドラゴン」というドラマで取り上げられていたのだ。
でも、ほぼ話を覚えていなかったけどね。
ということで本書に収められているお話は;

「明烏」

大変な堅物の若旦那。心配した父親がならず者の源兵衛と太助に頼んで、若旦那を吉原に連れて行かせる。
若旦那を稲荷にお参りに行くとたぶらかして、吉原に行く一行。
さすがの若旦那も吉原に着いたら、だまされたことが分かり、なんとか帰ろうとするが、3人で大門をくぐったら、やっぱり3人で大門を出ないと捕まる、とだまされ脅されて、帰られなくなる。
メソメソする若旦那をほっぽって多いに楽しんだ源兵衛と太助が朝起きると、若旦那は花魁に見初められ、よろしくやっていた、というお話。

「品川心中」

品川の妓楼の板頭(トップ)を勤めるお染。とはいうものの、歳には逆らえず、すっかり暇になってしまった。
衣替えするアテもないし(花魁は大層お金がかかって、大体客に出してもらっていたそうだ)、若い女の子には馬鹿にされてあまりに悔しいってんで、自殺することを思い立つ。
でもただ自殺するだけじゃ体裁が悪いから、馴染みの客の中でぼーっとした感じの金蔵を巻き込んで心中をしようとする。
さあ、いざ、と言うところでしり込みする金蔵を川に突き落とし、自分も落ちようとしたところで、違うなじみの客が大金を持ってきたと聞き、やっぱり生きることにする。

というなんとも酷い話。でも金蔵は生きているのでご安心を。

「厩火事」

夫の自分への愛を疑う妻。なにせ妻のほうが年上だし、稼いでいるのは妻。夫は遊びほうけ、いったい本当に自分のことが好きなことが分からない。
その夫の兄分が、相談にきた妻に、夫が大事にしている皿を持ったままこけて、夫が皿を心配するか、はたまた妻の体を大事にするかで、その愛情をはかれば?と提案する。
さっそく、それを実践する妻。
結果としては、妻の願うとおりになるのだが、そのオチとして

「おめえに怪我されてみねェな、あしたっから遊んでて酒が飲めねェや」

(p110)

一勝一敗って感じか。

「お直し」

今度は吉原の話。
なかなか売れない花魁が妓夫太郎に慰めてもらっているうちに、二人の間で恋が芽生える。
お店の中ではご法度事だが、旦那のはからいで、二人は夫婦となる。しかも通いでその店で働けることになった。
でも、夫のほうはしばらくすると、遊びにかまけるようになり、ついには二人そろって首になる。
にっちもさっちも行かなくなるわ、夫の賭け事のせいで借金は増えるわで、夫のいたっての望みで、妻はまた花魁になる。
でも夫はそれに嫉妬してしまい、最終的には二人の愛が深まってめでたしめでたし。

「お若伊之助」

お若という大店のお嬢さんの、一中節のお師匠さんに、とあてがわれた元武士の伊之助。
堅いからということで招かれたのに、いつしか恋仲になってしまった二人。それに激怒したおかみさんにより、二人は離れ離れに。お若は叔父さんの家に預けられる。
するとどうもそこへ伊之助が通っているらしい、となる。
ふたをあけたらそれは狸だった、という話。

「駒長」

支払の催促に苦しむ夫婦。もとはというと、夫の賭け事好きによるものなのだが、その夫が妙案を考え付く。
妻が支払相手である損料屋に懸想していて、その人宛に送ろうとしている恋文を夫が見つけて夫婦喧嘩する、という芝居を一つ打とう、となる。そうすれば、損料屋はきっと本当に妻のことが好きだから、お金を置いていくだろうというわけだった。
事がうまく運び、怒ったふりして夫が家を飛び出すと、それが嘘から出た真なってしまって、二人で逃げてしまう。

「三年目」

病弱な妻。その妻のきがかりは、自分が死んでしまってから夫が後妻を迎えるだろう、とのこと。
夫はそれはない、と否定するが、親戚の目もあるし娶らなくてはいけなくなるだろう、と尚も言い募る。夫は、「じゃあ 幽霊となって出て、その新妻を脅かせばいい。そうしたらその人も逃げ帰るだろう」と言う。
それを聞いて安心した妻はぽっくり逝ってしまう。

さて、妻が予言したとおり、夫は親戚の強固な薦めにより再婚することになる。ところが初夜にも次の日にも、その次の日にも、死んだ妻は現れない。
“薄情なやつ”と思いながら、気を持ち直して、新妻を慈しむことにし、子どももできる。
それから三年後、約束通り幽霊となって現れる元・妻。旦那に「子どもまで作って」となじるので、「お前だって現れなかったじゃないか」と言い返すと、死んだ時に髪を切られてしまった、それが伸びるのを待ってたんだ、と言われる。

「崇徳院」

大店の若旦那が恋の病で倒れ、あと五日の命。父親である旦那に呼ばれ親分が見舞いに来る。
なんでも稲荷の境内で偶然会った女の人が忘れられないという。
旦那の言いつけで、その女性を探すことになった親分。手がかりは、その女性が若旦那に渡した『瀬を早み岩にせかるる滝川の』と書かれた短冊。

「搗屋幸兵衛」

小言の多い大家さん。そこへ搗屋の男が空き家に住まわせて欲しい、とやってくる。
そこで語りだす大家さん。延々と続く話はというと、大家さんの最初の妻は病弱ですぐ亡くなってしまった。その妻の遺言もあって、妻の妹と結婚する。
ところが位牌が、いくら正面に戻しても、しばらくすると後ろ向いてしまう。気が弱って妹も亡くなってしまう。
亡くなってから気づいたのが、その時に住んでいた搗屋が米を搗く反動で位牌が反対向いてしまったのだ。
それで搗屋に恨みを持ったんだ、というお話。

「真景累ヶ淵 豊志賀の死」

怪談話。どうやら『真景累ヶ淵』の一部らしい。
小間使いとして雇っていた男といい仲になってしまった富本節のお師匠さんである豊志賀。
男嫌いっていうことで、お嬢さんやら男やらの弟子が多く集まっていたところを、男ができてしまったのだから、評判は一気に下がって、弟子がいなくなってしまった。
一人だけ残った弟子というのが、うら若きお嬢様。
豊志賀は自分が年上ということに引け目を感じているものだから、男がそちらになびくのではないかと気が気でない。
ついに目の病気になってしまった。
病床から「あのお嬢さんに気があるんじゃないの」と妬み事を言われ続けるのに嫌気がさした男が、町を歩いていると件の女性とばったり出会ったりなんだりしながら、叔父の家に帰ってみると、豊志賀がやってきていた。
なんとか駕籠に入れたとたん、「豊志賀師匠が死んだ」という話が入ってくる。

「文違い」

花魁から頼まれてお金を工面する客。花魁は「田舎の父親が無心に来るが、これで終わりと言われたから、どうしても20円そろえなくてはいけない」と言っているが、実は、自分の間男が病気でその薬代のためだった。
ところがその間男は、実は病気じゃなくて、自分の女のためだった。
という“実は”がたくさん出て、それが手紙によって発覚していく、という話。

「締め込み」

泥棒が空き巣に入って、着物とかを包んでいるうちに、家主が帰ってきてしまって、慌てて荷物をそのままにして、床下に隠れる。
帰ってきたのはそこの亭主で、着物を包んだ風呂敷を見つけ、だんだんと妄想が膨らみ、これは妻が駆け落ちをするための身支度だ、と思ってしまう。
そこに帰ってきた妻。亭主の剣幕に驚きつつ、こちらも妙に勘ぐって、亭主が他の女と一緒になりたいがために言いがかりをつけている、と思ってしまう。
大変な夫婦喧嘩になりそうなところを、床下に隠れていた泥棒が、双方の誤解を解いて丸くおさめる、という話。

古今亭志ん朝 「志ん朝の落語1 男と女」 京須偕充・編 2003年 筑摩書房

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