バナナケーキが食べたくなってしまった:加藤実秋 「インディゴの夜 Dカラーバケーション」


本屋さんの店頭でたまたま、「インディゴの夜」シリーズの新刊が出ているのを知って、図書館で調べてみたら、まだ入荷(というのか?)されていないことが判明。初めて図書館に買ってもらった本と相成った。
本書は新キャラが登場し、相変わらずの晶さんの鋭いツッコミがさく裂し、私にとっては十分な内容だった。

それと、憂夜さんの過去がちょろ~~りと出てきて、それも見どころだったかな。実は憂夜さんにはまったく興味がないので(むしろ憂夜さんに対する晶さんのツッコミが私にとって目玉)、「あ 憂夜さんって謎多き人だったわね」と今更ながら認識してしまった。
とりあえず、軽く読めるので、エンターテイメントを求めるのには良い本だと思う。
ドラマ化やら舞台化されているみたいだけど(確か)、それもうなづけるような内容。ま、私は観たくないけどね。

さて本書に収録されているのは以下の通り;

「7days活劇」

大幅に改正された風俗営業法の影響で“club indigo”は二部制となり、一部は今まで通りホストクラブ、二部はもうちょっと早い時間にオープンして、もっと手軽な感じでコントやライブを行いつつ、メニューにケーキも登場させる、なんて風にしたら、これも大受け。
そんなこんなで相変わらず盛況な“club indigo”。
でも裏では、古参である一部のホスト達と、新参者で妙にクールな二部のホスト達には溝が出来ていた。
そんな折に、二部のホスト・手塚達とその指名客は、都市伝説化している「エコ女」に遭遇してしまう。
そして、それから手塚達は「エコ女」の呪いといえるような災難が襲いかかる。それですっかりびびってしまった指名客を守るためにも、「エコ女」の正体を突き止めることになる。

「サクラサンライズ」

晶のパソコンを買いに秋葉原に繰り出した一行。
そこで偶然にもオタク狩りに出会ってしまう。もちろん晶は黙って見過ごすわけがなく助け出すのだが、被害者は留学生のカリームだった。
不思議なことに、手塚と非常に気が合い、成り行きで“club indigo”に無償で働くことになる。
ところがある時、カリームが不審な形で姿を消してしまう。カリームが残した携帯の中を見ると、どうやらドラッグに関与しているらしく……。

ちょっと「花咲ける青少年」の第一話を思い出してしまった。別に恋とかに発展するわけじゃないけど、名前がそんな感じだからかしら

「一剋」

何かと“club indigo”につっかかってくる刑事・豆柴が思わぬ濡れ衣を着せられて自宅謹慎を食らっている、なんとか身の潔白を証明して助けてやってください、と部下の早乙女が頼みに来る。
調査していくうちに殺人事件までに発展してしまい…というお話。
今まで豆柴ってちんちくりんな感じで、笹野 高史みたいな人を想像していたが(笹野 高史に失礼)、今回の話で太っていたことが判明。ちょっとそこで豆柴が分からなくなった。なんちゃって

「Dカラーバケーション」

このエピソードこそが、憂夜さんの過去に触れたお話。
初めて憂夜さんが長い休みを取るところから話が始まる。
そんなときに、憂夜さんを訪ねて神戸から若い女の子が“club indigo”に姿を現す。
話を聞くに、憂夜さんは昔神戸にいたことがあったらしく、その時に強盗事件に巻き込まれたよう。
憂夜さんには連絡がとれないし、憂夜さんの過去も気になるし(主に晶が)で真相を探る。
結局憂夜さんの過去はあいまいなままで終わるが、それで良いだろう、というようなオチで終わる。

今回、ぷっとなったのはこのシーン;

「出た。なにげに上から目線。チンチクリンだかフォンドボーだか知らねえけど、いい加減にしろよ。そりゃ歳はお前よりお前のお袋さんに近いけど、晶さんだって女なんだぜ。『親しき仲にも性別あり』って、いつも憂夜さんに言われてるだろ」
 フォローの意味をなしていないが、悪意もないらしい。手塚くんがなにげに上から目線なら、ジョン太はさりげに論点ずれまくり。これがclub indigo一部二部きってのナンバーワンホスト。頼もしい限りだ。

(p77)

他にもあちこち“ぷっ”な場面はあったけど、ぱっと思い出したのはここだったので。


加藤実秋 「インディゴの夜 Dカラーバケーション」 2010年 東京創元社

コメント

タイトルとURLをコピーしました