あんな文句垂れていたのにまた借りてきた有川浩の「図書館内乱」。
いやーなんだかんだ続きが気になるから、“one more chance”と思って読んでみたら、すっごい続きが気になる感じで終わってしまった。ということで最後まで読みそうだな。
本作を読んで気付いたのが、私が普段から馴染み深い小説というのが“story”というものを中心に据えているのに対して、本シリーズは“登場人物のキャラクター性”を中心に話が進んでいるということ。
「ラノベは」と頭に付けられるくらい、ラノベというジャンルを読んでいないので一慨には言えないけれども、確かに“登場人物のキャラクター性”が第一にくる、という形態は漫画に似ている感じがするし、だからラノベを読むのも“漫画を読む”という感覚に近いんだと思う。
つまり、漫画は確かにストーリーも大事だけれども、何よりもキャラクターが魅力的ではないと成り立たない。
何せ視覚的にバーン!とキャラクターが提示されているんだから、それが面白くないと全体的に面白くないわけだ。
そんな感じで、このシリーズもまずキャラクター在りきなんだな、と思った。
私にとって馴染み深い小説群が“物語在りき”であるのに対して、このシリーズは各キャラクターの個性を表現した物語が提示されているような気がするのだ。言いかえれば“物語のための登場人物”じゃなくて、“キャラクターのための物語”みたいな。
と、なんとなく感じて読み始めたら、あんなに読みにくいと思っていた本シリーズも、割とさくさく読めた。
お作法が分かったって感じなのかね。
と御託はこれくらいにして、本書の話になると、
今更ながら、これって連作物なんだね、と気付いた…
いや、前作からなんとなく分かってたけど、連作に見えて最後に全部繋がるってな形態かと思っていたわけですよ、なぜか。
なにはともあれ、短編集的なものなのね、とようやく気付いたのは、ま いささか遅すぎというのは認める…
本作に収められたのは以下の通り;
「一、両親攪乱作戦」
郁の両親が訪れる、という話。郁が図書特殊部隊に入っているってのはもちろん両親には内緒にしてあるので、班の皆や柴崎の協力を得て、なんとか乗り切ろうという話。
ま、お約束ながら、父親は郁の本当の業務になんとなく気付いているようだよ、と示唆して終わる。
「二、恋の障害」
小牧と、その幼馴染の中澤毬江の話。毬江は聴覚に障害がある女子高校生で、小牧に恋心を抱いている。
小牧は毬江を大事にしていて、図書館に毬江が訪れると本を紹介してあげたり、突発性難聴にかかってから内に引き篭もりがちの毬江を訪ねたりしている。
そんな中、小牧が毬江に勧めた本が難聴者を扱った本で、それをメディア良化委員会の目に留まり、難癖をつけられて小牧は連行されてしまう。
結局は毬江の力も借りて助け出すのだが、それの手助けとなったのが、手塚の兄であった。
どうやら手塚は兄との確執があるみたいで…と匂わせる感じのお話。
「三、美女の微笑み」
柴崎に直球でランチを誘ってきた利用者・朝比奈。周りに囃したてられ嫌々ながら着いていくが、いつも軽くいなせる柴崎もてこずるくらい、相手はなかなかの誘い上手。
そんな折に、ある事件が起きる。
玄田の知り合いが勤める雑誌社が、少年犯罪の調書を独自のルートで入手し、それを一挙に公開したのだった。
もちろんそれは違法すれすれのところで、メディア良化委員会のかっこうの餌食になる。一応、図書館側としてはその雑誌を守るのだが、さて図書館でどう扱えばいいのかが議論となる。
新しく就任した館長はやり手で、彼の誘導で結局、雑誌は閲覧しない運びとなる。
「四、兄と弟」
本書はサブキャラ達のお話って感じで、今回は手塚の話。
図書館のホームページのコンテンツの一つに、辛口書評が入った。それがあまりに辛口で、面白いと思う人もいれば、不快に思う人(特に出版社や作者)たちも多数。そしてそれを書いているのが、手塚のルームメイト砂川であった。
さて、話は変わって手塚の兄の話だが、兄はやり手の図書館隊であったが、図書館が地方行政に頼るよりも、国家公務組織になった方がいいと思っている過激派で『未来企画』という組織を作っている。
兄は手塚をこれに引き込もうとしているのだが、手塚は頑として譲らない。
そんな折に砂川は、図書の隠蔽というものを犯してしまい、査問にあげられることになる。
ところが、彼はなぜか郁が共謀者だと語り、そのまま精神病だとして休暇をとってしまう。
てなわけで、郁は査問会に呼び出しがかかり…というところで、次の章へ。
「五、図書館の明日はどっちだ」
郁の査問会との戦いの話となる。
結局黒幕は手塚兄で、手塚が欲しいがために郁を落とそうという魂胆だったのだ。
最終的には査問会は唐突に終わることになるのだが、手塚兄より郁は爆弾となる手紙をもらう。それに書かれていたのが;
高校生以来の憧れの王子様が上官の女子になんかちょっかい出すものじゃないね。
(p348)
これで郁は、堂上が“王子様”であることに気付く!!!というところで終わったのだが。
実は、この手紙の内容がまったく理解できなくて今、抜粋してみてようやく分かった…
“高校生以来の憧れの王子様が、上官の女子になんかちょっかい出すんじゃないよ”というふうに読んでしまって、「???」てな感じだったのだ。
ふ~ なんかすっきりした。
本当はここに書いたあらすじ以上に、派閥だなんだという問題があるのだが、なんか真剣に理解して読むのが面倒くさくて(ヒドイ!)、さらっと読んでしまったがために頭に入っておらず。だからって読みなおして書く必要ないよな、だってそれなくても成り立つ話だったし、と思って割愛しました。
そこの設定とかが面白いのかもしれないけど、ま いっか。
有川浩 「図書館内乱」 2006年 角川書店
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