表紙のエゴン・シーレの絵、いいなぁ・・・:道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」


一作目である『背の眼』を読んで、文句のつけ所はあるけど割と面白かった、何せ『背の眼』は第一作目だしな、違う本も読んでみよう、と思って二作目の『向日葵の咲かない夏』を図書館で予約してみたら…
も~ 待つこと何カ月。やっとめぐってきたよ…
途中で何度、古本屋で見つけては買おうかと思ったか…
でも読了後の感想は、古本屋といえども、理性が働いてよかったーということだった。
つまり、この本は家に置いとくない種類でした、ハイ。

『背の眼』と同じくホラーサスペンスだが、今回は“ホラー”の部分は幽霊だのそういう恐怖ではなく、グロい系だった。
そして親からネグレクトされている子どもが主人公だったり、少年に性的いたずらをしていた先生が出てきたりと、読んでて気持ちがいいものではなかった。
そんなわけで、最後にはどんでん返しがあって、「え え それはどういうこと!?」というところがあったが、読み返す気がさらさらなくて、インターネットで他の人のブログを探し廻ってしまった。
そんなこんなであらすじはネタばれがあるので注意!



主人公のミチオ(今回は下の名前)は小学四年生。
明日から夏休み、という時に、クラスメートのS君がお休みしており、S君の家にプリントやらを届ける役になる。
S君の家を訪ねると返事が何もないので、中に入ってみると……そこには首を吊ったS君がいたのだ。
慌てて学校に戻るミチオ。
ところが先生と警察がS君の家にいくと、死体なんてどこにもないというのだった。
ミチオが家に帰ると、そこにはS君の生まれ変わりの蜘蛛がいて、ミチオに自分は自殺ではなくて殺されたんだ、と言う。

そして犯人は担任である岩本先生であり、是非自分の死体を捜して欲しいと頼む。
こうしてミチオと、その妹・ミカはS君の死体捜しを手伝うことにするのだった。

で、何がネタばれかというと、ミカも実在の人物ではなく“生まれ変わり”のトカゲで、ミチオ・ミカの兄弟が親しんでいるトコお婆さんも“生まれ変わり”の猫であったということ。
そして、本当にミカの死は、まだ母親が妊娠中に、ミチオがいたずらで「火事だ!」と叫んだところ母親が階段から落ちて流産してしまったところにある。
だから母親はミチオに対して憎悪の念を抱き、ネグレクト状態にあるというわけだ。
ミカの部分は割と分かりやすく、3歳児と言っている割には非常に大人びている時点でおかしいと分かる。

その上、母親がミカにだけ優しい口調で語りかけるのだが、それに対するミカの返答は冷たいものでちぐはぐ、且つ母親はその返答に気付いていない様子。
そして母親が“ミカ”としている対象は人形じゃないのか?というのもすぐ分かる。ミカが服を着ていること(スカートに関する母親の言及と、裸になって転がっているっぽいシーンがあるので)から察せられるのだ。

対してミチオが“ミカ”と呼んでいる対象が、トカゲだということは分からなかったが、母親の“ミカ”と違うのはなんとなく察せられた。なんとなく、ミチオと母親と“ミカ”が同じところいにいるシーンがあるのだが、ミチオ→“ミカ”の視線と、母親→“ミカ”の視線が微妙に違う気がしたのだ。
ま、感覚的なものだから確証はないが、そもそも道尾氏が意図したところじゃないかもだけど、不自然さを感じたってことだ。

ま、そんなこんなで“ミカ”に関してはクリアだったし、トコお婆さんも怪しい…って感じだったけれど、それがああなるか!って感じだった。
そして意味が分からなかったのが、本当に本当に最後。
思わずインターネットで探しまくったというのは、ミチオは総ての事件が終わった後に家に火をつける。

そして両親に逃げるように促して、自分は残る!と言うのだが……
エピローグでは、皆助かっている。
でも、母親は妙に優しいし、この一文で“!?”となる;

 関西に住んでいる親戚が、今夜七時に、僕を引き取りに来てくれることになっていた。N駅の、タクシー乗り場の前。そこが、待ち合わせ場所だった。葬儀のあと何度も念を押されたので、場所も時間も間違いないはずだ。

(P267)

“葬儀”!?誰の!?
ということで軽くパニックになった私はインターネットでブログを見たら、“もしかして両親も死んじゃったの!?”と言及しているところがあって、ああ!なるほど!!!とやっと分かったのだ。
なるほどねぇえええええ!!!
この後に;

 太陽は僕たちの真後ろに回り、アスファルトには長い影が伸びていた。一つきりのその影は、S君といっしょに夕方の校舎へ入ったとき、僕が見た影と、そっくりだった。

(p267-8)

とあるのだが、なるほどねぇえ!だから影が一つしかないのね!!!
なるほど~って感じだけれども、だからといってどんでん返しものに付き物の、すっきり感は抱けない作品だった。


道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」 2005年 新潮社

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