今度こそ必ず落語を聞きに行きたい!:古今亭志ん朝 「志ん朝の落語6 騒動勃発」


ついに来てしまった、“志ん朝の落語”シリーズの最終巻。
あー面白かったなぁ~
結局読み終わるまでに落語を見るには至らなかったなぁ。
収録されている噺は以下の通り;

「大工調べ」

大工の棟梁が自分の手下が仕事に出ないので様子を見にいくと、家賃を滞納したので大家が借金のカタにと大工道具を取られてしまって仕事ができない、と言われる。棟梁は手持ちのお金を渡し、これでは足りないがなんとかしてもらうように手下をやるが、大家は首をたてに振らない。怒った棟梁が大家の元へ飛び込むが、それでも大家は許さない。
結局、お白州沙汰になり、判決としては棟梁に全額支払うように言いつける。
棟梁が払った後お開きになるかと思ったら、今度は大家に向かって質株があるか聞く。当然大家は持っていない。
ということで結局、棟梁側にお金が戻って終わり。

ちょっと「ベニスの商人」っぽい感じがした。

「酢豆腐」

皆がお酒を飲もうといってわらわらいる話。
そこへ知ったかぶりばかりして評判の悪い若旦那がやってくる。そこで腐った豆腐を勧め、「珍味と聞いたのですが、どうやって食べるのか分からない。是非教えてくれ」と頼むと、若旦那はやっぱり知ったかぶりをして、色々講釈を垂れて食べる。
わいわいした感じは面白いが、一人を笑いのダシにするっていうのは、自分の性に合わないというのがよく分かった。

「お化け長屋」
どうも長屋の住人としては、一部屋くらい空いている方が、大家の家賃の取り立ても厳しくないっていうので良かったようだ。
ということで、空家を訪ねてくる人を追っ払おうと一計を高じる。
というのは、その部屋には幽霊が出る、と言うのだ。

まず一人目はそれで追い払えたが、二人目は威勢のいい江戸っ子。
障子が勝手に開くと言えば「便利な家だ、それァ。おれァそんとき狙って小便に行くよォ、あア。」(p129)と言うし、幽霊が出てきてケタケタ笑いますと言えば「陽気でいいね、それァ。泣いてんのァいけないよ、めそめそしてんのは陰気で。」(p129)と言うしまつ。
結局、追い払うことができずに終わる。

なんか、お化けが絡む落語って好きだなぁ~とつくづく思った。しかも怪談話よりも、ちゃきちゃきの江戸っ子がお化けをぶっ飛ばしちゃうような。



「二番煎じ」
江戸時代、火の廻りという風習があったそうな。一軒から一人ずつ出てきて、皆で火の廻りをしたそうな。
そのお話なのだが、ある時月番が、二組に分かれて回ろうと提案する。そうして自分達のグループを先に廻してから、番小屋に戻ると酒盛りを始める。
そこへ役人がやってくる。皆で慌てて酒を“煎じ薬”といい、猪鍋を“煎じ薬の口直し”と嘘をつく。
役人も心得たもので、“煎じ薬”をゴクゴク呑んでしまい、皆がこれ以上呑ませたらなくなっちゃうというんで「もうない」と言えば、

「うむ、しからば拙者、いま一廻りしてまいる。その間に、二番を煎じておけ」

(p167)

これも群衆劇のわいわい感が面白い。しかも内緒で酒を出すのはまだしも、猪鍋までやっちゃうのが面白い。

「今戸の狐」

噺家の話。ある経緯で通いの前座になってしまった良助。通いだとお金に余裕がないので、今戸焼きの狐の彩色の内職をしている。でもそれは内緒のことであって、決して師匠や他の弟子に知られてはならない。

ある博打打がその師匠の家の前を通ると、内弟子達がお金を数えているのを聞いてしまう。
それをすっかり博打と勘違いして、自分も混ぜろと言って来るのだが、「狐が出来る」と言うのだから、弟子はすっかり勘違いして、「師匠には絶対内緒ですよ」と良助を紹介する。
どうやら「狐が出来る」というのは博打の隠語らしいのだが、良助とてそんなことを知らないから、しばらくちぐはぐな会話が続く。

どうも博打が馴染みがないので、噺自体にも馴染みを感じなかった。志ん朝さんがマクラの部分で、割と丁寧に「狐が出来る」ということにつても説明しているのだが、どうにも馴染みにくいやねぇ

「お見立て」

お客さんと花魁の間で右往左往する若い衆の噺。
客に会いたくない花魁は、若い衆に頼んで最初は「病気だ」と言わせるが、それでも帰らないもんだから「死んでしまった」と言わせる。
するとすっかりだまされた客は、花魁の墓参りに行きたいと言う。若い衆は一応墓場に連れていくが、ほとほと困ってしまう。

あっちいったりこっちいったりして、にっちもさっちもいかなくなるシチュエーションはやっぱり面白いもんだな、と思わせるお話だった。

「三軒長屋」

鳶頭の家とお妾さんの家と剣術の道場がある三軒長屋の話。
いまいちオチが理解できなかったのだが、お妾さんが騒々しくて危ないこの長屋は嫌だとダダをこねると、旦那が二人を追いやることができると言う。
それを聞きつけた鳶頭と道場の主は一計を高じて、引っ越すことにするのだが、ふたを開けたらお互いの家に引っ越すだけだったという話。

「雛鍔」

植木職人が嘆きながら家に帰ってくる。なんでも仕事でお屋敷に行ったら、そこの坊っちゃんが銭を知らずに、お雛様の鍔だと思った、というのを目撃して、やっぱり産まれがいいからいやしさがない、それに比べてうちの子どもなんて二言目には「お銭をちょうだい」と言う、と嘆くのだった。
それを聞いた子どもは、ご隠居が訪ねてきた時に、それと同じことをご隠居に披露するというお話。

今まで読んできた中から察するに、どうも落語の中の子どもは可愛くない。この子も可愛くなかったな…

「抜け雀」

文無しのまま泊まった客が、宿賃の代わりに襖に雀の絵を描いて出ていく。
するとその雀は襖から飛び出して、また戻る、という不思議な襖となったのだ。
それですっかり評判となり繁盛した宿。
そこでひょっこり老人がやってきて、「この絵には雀を休ませるところがない。じきに雀は落ちますよ」と言って、枝と鳥かごを描く。
何年か後に、例の客が戻って来てその襖を見る。曰く、その老人こそは自分の父親だったという。
無銭だった頃は絵の稽古をしないといって勘当されていた、なんで勘当が解かれたか分からなかったのが、父がこの雀を見てくれたのだというなら合点がいった、というお話。

「三方一両損」

これもお白州が出てくるお話。
財布を拾って届けたら、その持ち主に金をなくなってよかったと思っていたのに何で持ってくるのか、と言われ喧嘩になる。
二人の大家も巻き込みお白州沙汰となる。そして判決が「三方一両損」というもの。
つまり拾ったお金は3両。どちらもそれを受け取らないというのだから、その心意気をかったということで役人より褒美として二人に2両ずつあげる。
そうすると三方(役所、財布の持ち主、財布を拾った人)が1両ずつ損するので「三方一両損」。

ほへ~ なるほどね

「高田馬場」

蝦蟇の油売りをしている姉弟。そこへ老侍がやってきて傷を治して欲しいという。その傷の由縁を語ると、その人こそが姉弟の敵だと分かる。
さあ敵討が始まる!となると、老侍は主人のに暇乞いをしたいから、と懇願する。
武士の言葉と受け取って、双方は高田馬場へ後日改めて会うことを決める。
周りの野次馬はその日にちに高田馬場へ出かけて敵討見物を決め込む。
しかし約束の正巳の時刻が過ぎてもなにも起こらない。
そこへやってきたのが件の老侍。のんきにお酒を飲んでいる。問いただせば、実はあれは嘘で姉弟こそ彼の子ども、そうやって高田馬場に人を集めることで茶屋からお金をもらって生計を立てているという。

古今亭志ん朝 「志ん朝の落語6 騒動勃発」 京須偕充・編 2004年 筑摩書房

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