この間、初めて「本の交換会」なるものに参加してみて、そこで交換してもらったのが「青の炎」。
ちなみに「ショートソング」と交換してもらった。
「青の炎」は、蜷川幸雄+ニノ好きの妹が“面白いよ~~”と薦めてくれていたものの、全然読んでおらず。
しかもついこの間、宮部みゆきの「クロスファイア」と混同していたことを発見。
というわけで、持ってきた人の紹介も心惹かれたし、いい機会だと思って交換してもらって読んだら・・・
面白かった~~~~!!!
本当に確かに面白かった。
しかも最後が気になって気になって、息もつかせぬ勢いで読みきった。
話としては、完全犯罪を目指す高校生の話、ということで犯罪者側からの話となっている(倒叙推理小説というらしい)。
主人公の櫛森秀一は湘南に、母親と妹と暮らす高校生。
そこへ母親の元・再婚者が転がり込んでくることから不幸が始まる。最低最悪な奴で、仕事もしないで酒を飲んでばかり。母親はやっとの思いで離婚したというのに、舞い戻ってきて我が物顔で家にのさばっている。
怖がる母親や妹を守るために、早く帰ってきたりとかしているのだが、それだけでは到底間に合わない。
家族の幸せを取り戻すには、そいつを殺すしかない、と思いつめる。
だが、殺人が発覚して世間が騒げば、それはそれで残る母親や妹の人生を狂わせてしまう。
それを避けるためには「完全犯罪」が必須である。
そうやって綿密に計画をたてたり、実験をしたりして、そいつを殺すことができた。
が。
幼馴染で仲良かったが、すっかりぐれてしまった同級生に、殺人がばれてしまう。
そいつは黙って欲しければ30万用意しろ、と恐喝してくる。
もちろん一回ではおさまらないことは目に見えている。
また彼を殺さなくてはいけない。
それも上手くいったかと思ったが・・・
まあ、この手の小説は発覚してしまうのがオチと相場は決まっているので仕方がない。
こうあらすじを書くと、なんの変哲もない話に聞こえるかもしれない。
でも何よりも、主人公の秀一が犯罪を犯すのも家族の為であれば、完全犯罪を目指すのも家族のため、というのが非常に好感が持てる。
いやいや、好感が持てるというレベルではなく、本当に心の底から、彼の完全犯罪を熱望するくらい感情移入してしまった。
タイトルの由来となったこのシーン;
静かな激怒が、ひたひたと心を満たしていく。それは、今までの、真っ赤な炎のような怒りとは異なっていた。秀一の脳裏で輝いていたのは、鮮やかなブルーの炎だった。最も深い思索を表す色。だが、その冷たい色相とは裏腹に、青の炎は、赤い炎以上の高温で燃焼する。
(p137)
なんて、秀一をよく表していて好きだった。
なるほど、賢くて冷静な高校生って感じだけど、それをフル活用するのは全て家族への想いの強さ、というところが『青の炎』だなと思った。
それだけに最後のシーンは悲しすぎた。
貴志祐介 「青の炎」 平成14年 角川書店
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