前回といい今回といい、男の人の名前はいいよな:小川糸 「ファミリーツリー」


「食堂かたつむり」を読んで、その文章に魅かれたのもあり、新作「ファミリーツリー」が出た時、普段は図書館派・買っても文庫本派の私としては珍しく、単行本を買ってみた。
Amazonでの評価は割と悪かったけれども、ま、応援する気持ちで買ってみたのだ。
でも図書館で借りた本を読みこなすのに精を出していると積んどく本になってしまい、やっとこさ読むのに至ったのだが。。。

う~む 正直、Amazonの評価の通り、非常にいまいちだった。
これの前に読んだ「青の炎」は結末が知りたくて読み急いだけれど、こちらは早く読み終わりたくて読み急いだ感じ。
大体、話があまりよくなかったと思う。

まず主人公の流星。
彼の目線で描かれているのだが、彼自身がまっっったく魅力がない。むしろ“嫌い”の部類に入る。
穂高に住む流星は、ひいおばあちゃんが経営する民宿に、姉と一緒に住んでいる。
毎年、親戚で一つ年上のリリーが夏に遊びに来るのを心待ちにしている。
ある夏、捨て犬を拾う。
海と名付け、流星は本当に仲良く育つ。

ところが、民宿が火事に見舞われてしまい、鎖に繋がっていた海を助けに行こうとするものの、父親に止められる。
海は結局助からず、そのせいで父親とぎくしゃくするようになり、ひいては家族を疎んじるようになる。

松本に引っ越した両親と姉とは別に、ひいおばあちゃんの菊さんと一緒に暮らす流星。
そこにまたやってきたリリーと恋人同士になり・・・
といった感じで、リリーとの交流とか、二人に成長が描かれているのだが、もうなんというか、海が死んでしまってから主人公の厭世ぶりになんだかこちらが嫌になってしまった。

リリーを追いかけて東京の大学に行くものの、大学に行かなくなったり、あんな世話になった菊さんの元にもなかなか帰らなかったり、それでいて何かと海を引き合いに出す。
確かに老衰とかでなく火事で焼死してしまった、というのはトラウマになるかもしれないけれども、読んでいるこちらとして苛々する。

最後に菊さんが亡くなるのだが(これに関しても「食堂かたつむり」と同じような物語構成だな、とマイナスに思ってしまった)、正直流星には泣く資格なんてないと思ってしまった。
流星だけでなく、相手役のリリーもあまり魅力的でない。

 リリーは、空とおしゃべりするのが大好きな女の子だった。

(p2)

という出だしで始まるのに、その設定がまったく生かされていない。
というかそもそも、そんなシーンがあまり出てこなくて、出てきてもそれがどうということがなく後に続かない。
だからリリーが特別な感じがしなくて、ただの気の強い姉ちゃんとしか感じられない。
と酷評してしまったが、よく考えてみたら小川糸さんの男の人って、所謂“へたれ系”が多いかも。
「食堂かたつむり」だって男に一切合財取られてしまうし、「喋々喃々」は優柔不断な不倫男。
今回は初“男が主人公”だったけれど、やっぱり“へたれ”男だったがために、苛々する話になったんじゃないかと。

とりあえず、次に期待したい。


小川糸 「ファミリーツリー」 2009年 ポプラ社

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