女性作家ほど、女性を容赦なく書くよな(当たり前か):桐野夏生 「グロテスク」


先日、読みたい本リストをひょっこり見つけたら、その中で未読分を片っぱしから潰していきたい衝動にかられて、まず一番上に書かれていた「グロテスク」を借りて来た。
確か、三浦しをんさんのエッセイに載っていたのだと思う。

感想はというと…
こんな太い本で、こんな読み応えのある題材で、こんな失望するエンドの本はかつて読んだことないわ、というものだった。
短く言うと“なんなん!?この結末!?”である。

内容はというと、ほぼ一人の語り口調で為される。
主人公はスイス人と日本人とのハーフで、妹が一人いる。その妹というのが、大変美人でそれはこの世のものとは思えないくらいだったらしい。

主人公が語り始めた発端というのが、娼婦となったその妹が殺されたという事件である。
そして主人公と同学年だった和恵も殺されているのだが、その和恵は昼間は誰もが知っているような大企業のOLであったので、夜には娼婦となっていたということで世間から注目を浴びている事件となっている。

基本的に、主人公と妹の確執、家族と離れてQ学園に入ってそこでの生活が主人公の口から語られており、合間に二人を殺した犯人の公判での証言、妹・ユリコの手記と和恵の手記が入っている。
主人公の妹へのコンプレックスや、和恵のコンプレックスなどが緻密に描かれており、まさに“グロテスク”。

特にQ学園での生活はリアルだった。女子高なのだが、小学校からある学校で、小学校からいる生徒、中学校からいる生徒といった順で順位がある。そんなわけで高校から入った主人公や和恵にはおよそ勝ち目のない世界なのだ。

その壮絶さもさることながら、和恵が鈍感に奮闘する格好は本当に滑稽に思えてしまう。そして和恵自身の手記によって明かされる和恵のその後の姿は、どの鈍感ぶりに拍車がかかっていて驚くばかりだ。
私自身が女子高出身なので、和恵のような人が容易に想像できるせいか(そしてこういう愚鈍さを嫌っているのも事実)、和恵に非常に興味があった。

確かに主人公の妹へのコンプレックスも印象的だし、美人=怪物という図式も、“美少女には必ず毒がある”という恩田陸的な図式とは違って、“美人”という容姿自体が怪物、というのが斬新な気がしたが、和恵のグロテスクっぷりには負ける。
そんな調子でグロテスクぶりを楽しんでいたのだが、この物語はどう決着をつけるのだろうか…と思っていた矢先にこのエンディングですよ!!!
エンディングにまつわるので、必然的にネタばれになるのでご注意を↓



突然ユリコの子供という美青年が現れたのにはまず驚いた。
その青年を引き取るというのは想像できたけれども、まさか まさか
和恵やユリコとまったく同じ格好して娼婦になるとは想像しなかった。

あまりにお粗末な結末じゃないか?
じゃあ どんな結末だったらよかったのかと言われると出てこないけれども…
とりあえず、この重苦しい話の結末としてはあんまりで、怒りすら感じているくらいだったりする。
和恵のグロテスクさは、さすが桐野夏生!(というほど読んでないけど)と思うくらいだったのになぁ~


桐野夏生 「グロテスク」 平成15年 文芸春秋

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