劉備がいまいち魅力的でない…:吉川英治 「三国志(一)」


昔々、三国志は原文で読むぞ!という野望があったのだが、今となってはそんなことは到底無理!ということが分かったので、日本語訳を読もうと思い立った。

思い立ったはいいが、一体だれの作品を読んだらいいのか分からず、とりあえず宮城谷昌光氏のを読んでみたら、一向に話が進まず挫折。
友人に相談してみたら、“手始めに読むのは吉川英治”と言われたので、吉川英治は好きな作家だしということで読んでみた。
もともと文章に慣れ親しんでいたためか、大変読みやすかった。

が、他の吉川英治作品よりも魅力に欠けると思った。多分、三国志の原文に忠実に書いているせいか、吉川英治作品特有の魅力あるキャラクターが出てきていないからかもしれない。

また、長~い三国志の一巻目だから、話の序章すぎてこれから面白くなるのかもしれない。

ということで本書は、劉備が張飛や関羽と出会い、黄巾賊を打ち倒すのを手伝ったり、曹操に出会ったりするところが描かれている。
曹操は反旗を翻して、それに劉備達も加担するのだが、結局戦局が悪くなり、曹操が身を潜めることにするところで終わっている。

キャラクターが云々、といっていたが、吉川英治によく出てくる(と私が感じている)カラッとした役柄というのは出てきていて、それが張飛に割り当てられている。
一巻の最後は彼の台詞の

「おい、飲まないか。まだおれ達の祝杯は、前途いつのことだか分からないが、生命だけはたしかに持って帰れるんだから―――少しくらいは祝ってもよかろう。馬上で飲み廻しの旅なんて、洒落ているぞ」
 などと張飛は笑わせて、いつも日々是好日の態だった。(p491)

で終わっているのが、二巻への期待を高まらせる。


吉川英治 「三国志(一)」 1989年 講談社

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