猫派なんだよなぁ:古川日出男「ベルカ、吠えないのか?」

本の交換会で紹介されていた本。その時は交換してもらわなかったけれども、タイトルがインパクトあったのと、今となってはなんと紹介されていたのか忘れてしまったけれども、魅力的だな~という印象が残っていたので借りてみた。

発想など斬新で、犬を追いかけていく形で終戦から冷戦を通り越しソ連崩壊まで描いているのは面白かった。
ただ、犬の名前が覚えられなくて、しかも犬がどんどん派生してくので、着いて行くのが難しく、面白味が減ってしまった気がする。

構成も独特で、年号がタイトルとなっている章と、セリフがタイトルとなっている章が交互に現れる。
年号がタイトルとなっているのは、そのままその時代の犬の話になっていて、セリフがタイトルとなっているのは一連の物語が続いて行く。
年号の方は、日本軍に置き去りにされた犬がアメリカに連れて行かれ、というところから始まり、ソ連、中国と行く。

あるものは軍犬として、あるものは野良犬として、あるものはコンクール用の犬として活躍していくのだが、その犬達はそれぞれ何らかの形で繋がっていく。ほとんどが軍犬の話で、最終的にソ連の軍犬に繋がっていき、セリフがタイトルの話とカチリと合うようになっている。

セリフがタイトルとなっている話は、最初は全貌が見えず、ただロシアに乗り出してきたやくざが襲われ、やくざの娘が誘拐されたところからストーリーラインが生まれる。
彼女は地図に載っていない街に連れて来られる。
そこでは何匹もの犬がいて、その犬達は軍用の訓練を受けている。
少女は子犬と意思疎通できるようになり(といってもハートワーミング的な展開にならず)、最終的に彼女自身が犬のようになる。

年号のタイトルの話が進むにつれて、もともとこの調教師はソ連の軍で調教していた将校だということが分かる。
最終的にチェチェンマフィアとロシアマフィアの抗争に巻き込まれ、少女と犬達、それから元将校やらその街に住んでいた人たちは、犬を使ってこの抗争に貢献していく、というところで終わる。

ソ連からロシアへの歴史がよく分かっていなかったので、最後は割と混乱した。
ソ連/ロシア史が分かっていたらもうちょっと面白かったかもしれない。

あとは年号のタイトルの章で特徴的な文章が苦手だった。
“イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?”から始まるのだが、時には犬に語りかけ、大変高いところから見下ろした感じの文章がどうも苦手だった。

この苦手な感じの文章、ソ連・ロシアの歴史の知識のなさ、犬の名前が覚えられないが相成って、大変読むのに苦労した本となってしまった。


古川日出男 「ベルカ、吠えないのか?」 2005年 文藝春秋

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