ジェームズ・ボンドのようじゃあ、スパイは務まらないってことかね:竹内明 「ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日」


アメリカドラマ「24」はまったついでに、「日本のスパイ=公安部」という流れでネットで検索している内にぶちあたったのが「ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日」だった。
これは実際に公安部を取材し、スパイハンターの活躍を追ったノン・フィクション。
スパイハンター一人ひとりを焦点にあてた為、臨場感にあふれた感じでなかなか面白かった。

ロシアの工作員と、それに情報を流す日本人。
そしてその二人を狩るスパイハンター達、という図式なのだが、そこで浮かび上がってくる事実といったら、「日本人は甘い」ということ。

本書でクローズアップされている事件というのが、海上自衛隊幹部候補で、防衛大学校総合安全保障研究科に在籍する森島。ロシア語もしゃべれて、ロシアに大変興味を持っている。
それに食らいついてきたのが、外交官に扮しているロシアのGRU機関員ビクトル・ボガチョンコフだった。

ボガンチョコフにとって森島が罠にかけやすい獲物だった、というのは私にだって分かった。
何しろ、息子は白血病を患い余命わずか。実質、ボガンチョコフとの交流期間に亡くなっている。
夫婦仲は冷えていて、森島は宗教にはまってもいた。
もちろん、あまりに低い対価の中で、重要機密を渡していた森島も“甘い”かもしれないが、公安、というか政府の体制自体も甘い。
何しろ日本には、スパイ防止法が存在しないのだ!
あとがきに;

 本書は、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の機関員が、幹部自衛官に工作をかけ、それを警視庁公安部外事第一課の捜査員が追い詰めてゆく様を描いている。そこにまず見えるのは国際社会の厳しい現実であり、日本という未熟な国家の存在である。冷戦が終結し、グローバル化が進んだ世界であっても、「国家」という概念が存在することは動かしがたい事実だ。国家はその国益を貪欲なまでに追求し、その先兵となる諜報要員を他国に送り込んでいる。日本もその対象となっているという現実に、日本の指導者n多くが眼を向けようともしないという現実が存在する。(p299)

とあるように、これを“島国気質”とか“ナショナリズムの反動”とかで片付けてしまうにはあまりに呑気なくらい、日本は“国家”という意識が弱い気がする。

なんだかミーハーな気分で読むには申し訳ないくらい真面目な本だったけれども、日本が「スパイ大国」なんていう汚名を着せられていることが分かってよかったと思う。
ま、私がスパイの餌食になるこたぁないと思うけど、身が引き締められたというか、
うん、なんというか、

日本、しっかりしろよ!

<竹内明 「ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日」 2009年 講談社>

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