Francesに子どもができ、Gabrielは小説を書いていました:Ruth Edwin Harris “Julia’s Story”


着々と読み進めているイギリス版若草物語。
今回は二女のJuliaが主人公。

小さい頃に読んだおぼろげな記憶によると、本書が一番面白かったのだが、読んでみたら成程、今までのなかで一番面白かった。嗜好は変わらないものだな。

何が面白かったかというと、Francesという越えられない壁を感じながら、海外へ外へと夢を見るところや、Mackenzie家の中で一番存在感のないGeofferyに焦点があたるところ。
一応Purcell姉妹の上3人は絵を描く姉妹で、それぞれ得意分野が分かれている。
Francesは風景画、Juliaは肖像画、Gwenは植物画。

でもJulia(そしておそらくGwenも)は、自分にはFrancesほどの才能を持っていないと思っている。自分はSlade美術学校に行く資格はないと思っているくらいだ。

その状況はMachkenzie家の二男、Geofferyと似ていた。
Geofferyの方がひどくて、長男のGabrielがよくできるだけでなく、末っ子のAntonyも非常に優秀で、しかもGabrielとAntonyはとても仲が良いのだ。そんなわけでGeofferyは影のようになってしまい(Lucyは一人女の子だし、牧師館の運営を手伝っている)、母親にも疎んじられている。

ただGeofferyとJuliaが決定的に違うのは、Geofferyは大変な劣等感を持っているのに対し、Juliaは“そういうものだ”と受け止めていて、素直にFrancesの才能を認めていることだった。
それでも二人は惹かれていき(というかGeofferyが)、the Quantocks に皆で行った時に初キスを体験して、めでたくゴールインするのだった。

それと同時にJuliaは、学生時代の友達Mirandaの家に遊びに行った際に、フランスはパリに行くことになったMirandaと同行してほしい、旅費はこちらが負担するから、といったことを依頼されていたことを知る。

でも、後見人の妻であるMrs. Mackenzieによって、それがおじゃんになっていたことを知るのだった。

非常にがっかりしたJuliaは、それからパリへの夢を見る。
もう一度、同じチャンスが転がり、今回は反対されることもなくパリへ行くことになる。
パリに着いたらアパートを借りて、スタジオを探して絵を勉強しよう、と思いつくJulia。そっとそれを計画していたのに・・・
戦争が始まってしまったのだ。

と、それだけでもドラマチックで、なんでも自分の思う通りにことが運んだ(といっても彼女なりの奮闘もあったけど)Francesよりも面白い。
Juliaはそれで投げやりな気分に一旦なるものの、“自分はなんの役にもたっていない”と思うようになり、――そしてそれは多分、自分の存在意義を見失ってしまったのだろうけど――VAD(救急看護奉仕隊)に入ってしまう。

そして念願のフランスへと渡っていくのだった。
そこでやはりフランスに派遣されていたGeofferyと何度か逢瀬を重ね、最終的には婚約までする。
ところがそれから一転、Geofferyから連絡が来なくなってしまい、Juliaが彼の愛を疑い始めたころ、訃報がくるのだった・・・
それから諦めがよくなってしまったJulia。

FrancesがGabrielのもとへとIrelandへ渡ってしまって出費を抑えられなくなった時に(折しもSarahがオクスフォードに行くことになっていた)、やりたくもない学校の先生になったり、Geofferyに縛られたまま、これでいいの?と思いながらDavidと結婚してしまったりする。
そして時が進んで、ロンドンで2人の子どもを育てて暮らしている時に、ばったりと昔の友人に出会う。

フランスでVADとして働いていた頃の友達で、Geofferyのことが話題にあがる。しかもその夜には、Davidにカナダに旅行に行かないか、と誘われる。そしてカナダこそが、Geofferyと“戦争が終わったらそこに住もう”と言っていた地だったのだ。
混乱したJuliaは夫が仕事でエディンバラに行った際に、実家に戻る。

たまたま実家に戻っていたFrances夫婦に会い、Gabrielと話す機会を得る。
そこですべてを話したJuliaは、GabrielやFrancesの助けを経てようやく、自分の新しいDavidとの生活を始めていくことになるのだった。
と異様に長くなってしまったが、それだけ本書が面白いということだ(自己弁明)。

JuliaもGeofferyも家族の中では脇役だからこそ、彼らにスポットライトが当たった時が面白いというか。
最後に、全然本筋と関係ない文書を;

In the half-light of a late January afternoon it looked more like an Arthur Rackham illustration than a living scene.

(p131)

実はArthur Rackhamが割と好きなんだが、今では知る人ぞ知るとなっている(何せ古い人だし)。それがさらっと出てきて、“あ、そういやぁ同じ時代か!”と妙な興奮を覚えた一節。


Ruth Edwin Harris “Julia’s Story” 1989 Candlewick Press

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