早く、早く続きを出してくださいーーー!!!:Ruth Elwin Harris “Gwen’s Story”

早く、早く続きを出してくださいーーー!!! 

いよいよQuantock Hills姉妹シリーズも最後、”Gwen’s Story”を読み終わってしまったー
といっても、これで終わりというわけでなく、“続きを出す”的なことを言って今に至ってるだけなんですが。

確かにちょっと最後は続きそうな感じで終わるんだよね。早く出してくれーーー
というかこの作者、今何してるんだろう…… これ以外に書いているわけでもなさそうだし。
それはそうと、この”Gwen’s Story”、実は全っ然話を覚えていいなかった。

日本語のタイトルが「グウェンの旅立ち」だとかいうのは覚えてたけど、なにがどう旅立ちなのかさっぱり覚えてなかったし、面白かったのか面白くなかったのかさえも覚えていなかった。
でも読み終えてみて、なんとなく覚えてなかった理由が分かった。
というのも、本作はグウェンの子どもの時の話よりも、大人になって他の姉妹たちに子どもができてからの話の比率が大きいから。

やっぱり子どもの時に読むものとしては、同年齢が主人公の話の方が関心深いもの。多分小さい時読んだ時は、なんの共感も得ないまま終わってしまったのでしょう。

今回は他の3作と違って、各章のタイトルが年代ではなくて、”Antony””Orchids””Tony””Germany”となっている。

才能にあふれるフランセス、行動的なジュリア、頭のいいサラに比べて、グウェンというのはあまり目立たない存在かもしれない。でもそれでいて、グウェンというのはHillcrestそのもののような感じなので、決して存在感が薄いわけではない。何よりもガーデニングが好きで、皆の食いぶちを育ててるところからして“しっかりしている”印象がすごく強い。

そんなちょっと不思議な存在のグウェンが今回の主人公だった。
本作を読んでみたら、なんでグウェンはHillcrestを離れないのかが分かった。
彼女は自分がいない間にHillcrestに不幸が訪れるのがずっと怖かったのだ。まず父親が死に、母親が死んだのだが、それはすべて自分がいなかった時。

だから外へ一歩も出たくないスタンスをとっていたのだが、そんなグウェンを外に連れ出したのがアントニーだった。

自然とアントニーに恋するグウェン。
というか恋ってな生ぬるいものじゃない。
人生設計をたててしまうのだ!!!

でも前3作で痛いほど分かる通り、アントニーは物語の最初の方で死んでしまう。
それから何年も経って、フランセスやジュリアが結婚して子供産み、サラまで結婚してインドへ行ってしまうが、グウェンは未婚のままアニーとHillcrestに住み続けている。
そこにフランセス一家やジュリア一家が里帰りしたり、グウェンがジュリアを訪ねてロンドンに行ったりする生活が続いている。

ちなみにグウェンのお気に入りの甥っ子は、フランセスの息子・トニーだったりする。
そんなグウェンのお話の縦糸になっているのが蘭である。
最初に蘭が出てくるのは、第一次世界大戦のさなか、お世話になっている邸付き庭師のMr.Whitelawに一株もらうシーン。

グウェンは蘭の美しさに嬉々として育てるのだが、軍の訓練から帰省したアントニーに見せると”Beautiful? Yes, of course. Still…A bit frippery, orchids, don’t you think, in times like these?(p60)”と言われてしまう。

そしてその後のアントニーの死をもって、グウェンは蘭を破壊し、憎むようになる。
ところがそれから何年も経ってある日、Mr.Whitelawの臨終間近に呼ばれると、彼の蘭のコレクションを譲り受けてほしいと頼まれてしまう。
蘭なんて嫌いで嫌いでしょうがなかったけれども、恩のあるMr.Whitelawの死の床からの願いとなると聞き入れないわけにいかず、ものすごい数の蘭を育てることになる。
そんな中、またもや戦争の影が迫ってくる。

それと同時に、蘭つながりで、ガブリエルのドイツでの教授に招かれることになる。
なんとその教授の蘭のコレクションの絵を描いて欲しいと頼まれるのだった(グウェンはプロの植物絵描きでもある)。
Hillcrestからほとんど出たことがないグウェン。

それなのにドイツへと旅立ったのだった!
ところがドイツではすでにヒトラーが台頭していて……
今の私が読んだら面白かったー

何が面白いって、普通、人の成長物語といったら思春期とか、年がいっても20代なのに、本書はもう中年であるグウェンの成長物語というところ。
アントニーによってちょっと外に出るようになったのに、またアントニーによってHillcrestに閉じこもってしまったグウェン。

そこに蘭がアクセントとして出てくるのがよかった。
アントニーから”A bit frippery”と言われ嫌いになり、また嫌々育て始めたけど、また好きになった途端、”Beauty is a luxury”と言われてしまう。
それはまるで挫折しそれを乗り越えて、という繰り返しに似ていて、最後にはその蘭が人の命を救うことになる、というのが非常に救いだった。
人ってどんな歳になって成長できるんだなーと勇気づけられた一冊。


Ruth Elwin Harris “Gwen’s Story” 1994 Candlewick Press

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