何かの折りにAmazonをぶらぶらしている際に、見つけた梨木香歩の新刊。
いつもの通り、図書館で予約して、待ちに待って手に入れた「f植物園の巣穴」。
そんな本書だが、正直う~んというのが感想だった。
雰囲気は好きだったのだが。
そもそも梨木香歩作品の中で、「家守綺譚」が好きで、その延長上で「村田エフェンディ滞土録」が好きとなると、おのずと法則が見えてくる。つまり、梨木香歩の作品の中で「主人公が男」で「一昔前(明治とか大正とか)が舞台」の小説が好き。
となると、「f植物園の巣穴」はその条件に乗っ取ってるから、好きになるはずなのだが・・・
主人公が歯痛のため、歯医者に行くところから物語が始まる。
彼はf植物園で働く職員で、下宿先からその植物園に通う毎日なのだが、歯医者に行く頃から彼の世界が微妙に歪んでくる。
前世の犬に変わってしまう歯医者の妻。いつのまにかなくなっているウェストン・ブーツ。木のうろ。
そんなのから始まって、幼年期の思い出やら、亡くなった妻との思い出などが交錯していって、挙句の果てには水底で過去と現在が入り混じった世界を体験する。
いわば、明治だか昭和期の主人公は男の「不思議なアリス」といった態。
支離滅裂気味に物語が進んでいって、最後の夢オチってところがまた「不思議な国のアリス」。
こう書いてみると面白そうな感じもするけど、私の頭にはこの支離滅裂具合がついていけなかった・・・
ちょっと凝りすぎな感じもするけど、ま 大きな要因は自分のせいでしょう。
というのは、話の内容が眠い+日常の疲れが合わさったせいで、半分寝ながら読んだのが訳が分からなくなった一番の要因の気がするからだ。
ということで、もうちょっと元気なときに読めば、もうちょっといい印象を持ったかもしれない1冊。
最後に、物語にずっと出てくる歯痛の話から、面白かった一節をば;
――つまり痛んでいたのは私の歯ではなく、心だった、つまり、胸が痛んでいた、そう言いたいのか。
(p45- 46)
声は私の言葉を受け取り暫くまた考えていたようだったが、
――心はいたるところにありますよ。足にも手にも、臓物にも、もちろんのこと、歯にですら。人の身体の範疇であればどこだって、心は宿ります。
梨木香歩 「f植物園の巣穴」 2009年 朝日新聞出版
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