時々出てくる名前の人が分からなくて困る:住井すゑ 「橋のない川(三)」


久しぶりの「橋のない川」。
実は前半部分読んで、しばらくほったらかしにしていたのでちょっとブランクが空いてしまった。
なので前半部分はあんあまり覚えていない……。
ブランクあって読み直すと「なんでこんな面白いのをほったらかしにしてんだろう」と疑問を思ってしまうのだが、それと同時に「なんでこんなに面白いと思うんだろう」と思ってしまう。
明かに心躍るような話では全然ないし、どちらかというと題材的に暗いお話のはずなのに、心魅かれるというか、心捕えて離さないというか。
自分でも謎なのだが、多分、彼らの人生が非常に鮮明に描かれていて、自分では体験できない人生を疑似体験できるだろうか。
なにはともあれ、今回のお話の中心となっているのは、誠太郎の兵役検査と米騒動となっている。

誠太郎は小森の同年代の青年の中で一人だけ、兵役検査に合格してしまい、2年間の兵役に服すことになってしまう。

そのため、奉公先の主人の娘さんと結婚するのが伸びてしまう。
それにほっとする誠太郎には心の迷いがあった。
というのは奉公先の米屋さんの主人夫婦は、実は部落出身なのだが、それをひた隠しにして暮らしている。
それは娘たちにも秘密で、彼女達含め、他の奉公人たちも背太郎がエッタということを知らない。
それを隠したまま結婚するのはどうも心苦しくて堪らないのだった。

さて米の相場がいよいよ上がって、それは金持ちたちが米を出し惜しみしているからだとあちこちで暴動が起きる。
ついには大阪でも起き、誠太郎たちはその騒動に巻き込まれることとなる。
その騒動のなかで一番活躍したのが竹槍隊で、それはどうやらエッタの人たちによって結成されあものだったらしい。

そうなると後でどうなるかは一目瞭然。
竹槍隊が出てきている時は、「やったれー!」という風潮だったのに、騒動が沈下してエッタと分かった途端、「これを機会にしょっぴいて、エッタたちを一掃したらいいのに」といった風にになる。
そして三巻の最後は、いよいよ誠太郎の出征となって終わる。
しかもハルピンへ出発ということになって、いよいよ家族に哀しみが増す。
何しろ、誠太郎たちの父親はやはり戦争で亡くなったのだ。

最後の最後に、誠太郎が小森に別れのあいさつに来て、それを孝二が送っていくシーンが切ない;
 さて、大橋を渡り切ろうとして、誠太郎はふと孝二を振り向いた。
「な、孝二、思えばわすら兄弟も大けなったもんや。」
「………。」
 何を言うつもりかと、孝二は誠太郎を眺めた。
「そうかて、学校へ行きはじめた頃は、お前はんはこの手すりとすれすれの背丈やった。それが見イ、今ではこの通り……。」
 誠太郎は手すりをさすった。

(p435)

そんな何気ない風であればあるほど、しみじみして哀しかった。
誠太郎と孝二の兄弟のきずなの強さがよく分かってるから余計だったと思う。
やっぱり「橋のない川」は面白いなー


住井すゑ 「橋のない川(三)」 昭和56年 新潮社

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