鴨飯がすごくおいしそう!!!:池波正太郎 「剣客商売全集 第一巻」


図書館にある“剣客商売”シリーズ、前までは他館から取り寄せての文庫版だったが、自分の通う図書館に単行本があるのを知り、二巻から借りてみた。
したらば、なんだか話が繋がっていないような気がする。
そうして気付いたのが、単行本の方が収録数が多いため、文庫版1巻でカバーしてないものも、単行本1巻ではしていたみたいだということ。
なので早速、単行本の第一巻を借りて来てみた。

以下は、文庫版では収録されていない話;

「鬼熊酒屋」

「鬼熊」という名の居酒屋の亭主・熊五郎は非常に気難しく、気性も荒い親爺である。小言は絶えないし、気に食わない客となると放り出してしまう。といっても腕っ節が特別強いわけではないが、彼の体、果ては命を張ってまでの剣幕には、ごろつきもこれ以上踏み込めない。
だからといって繁盛していないというわけではなく、酒は安いし、彼の毒口を日に一度聞かなきゃね、と言うごろつきどもがいるくらい。
そんな熊五郎が浅茅が原で悶絶しているところを、小兵衛は目撃してしまう。
しばらく様子を見ると、時々浅茅が原で悶絶し、薬を飲んで帰っていくようだった。どうやら熊五郎は不治の病、しかも死が近い病にかかっているようだった。
ある晩、店に押しかけてきた無礼な武士どもと乱闘になり、斬られかかる。それを小兵衛が助けるのだが、熊五郎は口から血を出して倒れてしまった。ついに病が彼の命を奪っていくのであった。

「辻斬り」

ある晩、小兵衛は辻斬りに出くわす。
もちろん小兵衛は難なくのしてしまうのだが、気がついた辻斬り達の後をつけていくと、彼等は旗本屋敷へ入っていく。なんと幕府の御目付衆である永井家の主が、辻斬りの首謀者らしいのだ。

その辻斬り衆に、小兵衛は自分の素姓を明かすと、相手は決闘を申し込んでくる。
この話のハイライトといえば、大治郎のファンとしては、この決闘を果たすために敵の道場に乗り込むシーンだろう。
小兵衛と乗り込むのだが、父の前にまず道場に乗り込み

 ふみこんだとたん、足をすべらせて仰向けに倒れた。
 道場の床板いちめんに、なんと、油がながしてあったのだ。
「わあっ……」
 鳴りをしずめていたうす暗い道場内に、十余人の喚声が、いっせいにわき起こった。
 倒れた大治郎を、小兵衛とおもったのか……。
 市口孫七郎はじめ、門人十余人が大治郎へ殺到したとき、倒れながら早くもぬきはらった大治郎の大刀が、門人二人の足を切り払っていた。

(p233)

倒れながらってのがミソです。かっこいい・・・

「老虎」

大治郎はばったり知り合いに出会う。その人は、信州で道場を構える人で、大治郎が剣の修行に出た頃にお世話になった人だったのだ。

その人・山本孫介の剣は、実践型で江戸の剣法とは違ったものであった。
その孫介が江戸へやってきたわけというのは、息子・源太郎が江戸に登ってからまったく音沙汰なくなってしまい、心配になってやってきたのだった。なにせ、親孝行者であったのに、孫介の妻、つまり源太郎の母親の七回忌にも帰ってこなかったのだ。
小兵衛も巻き込み真相を調べてみると、孫介があれだけ止めたのに、源太郎は道場を回って試合をしていたらしい。

何せ源太郎がやってきた剣は実践型なのだから、江戸の道場で勝てる人はなかなかいない。
今をときめく道場の主までのされてしまい、それを言いふらされてしまったら藩の庇護がなくなる、ということで源太郎を殺してしまった、というのが真相であった。
最後は孫介が敵討をしてお終い。

「悪い虫」

これまた私好みのお話だった。ま 大治郎が主人公だからってのが大きいけど。
奈何せん、『辻斬り』や『老虎』は、確かに相手が悪いんだけれども、“そういうやつは死んで当然”と簡単に表明してしまうのにちょっとばかし抵抗感を感じてしまうのだ。

それはさておき。
辻売りの鰻屋がある晩、大治郎を訪ねてきて、全財産・五両を払うから、十日間で剣を教えてくれ、と言う。
最初は“十日間では剣を教えることはできない”と断るが、彼の熱心なお願いと、小兵衛の言葉もあって引き受けることにする。
彼には強くなりたい理由があって、というのは自分の兄がひどいごろつきで、彼が必死で働いている所へ金を無心にやってくるのだ。抵抗すると暴力を振られる。
最終的には、ごろつきに一本取ってめでたしめでたし。

「三冬の乳房」

基本的に大治郎しか興味ないし、でも小兵衛の方が主人公格だし、ということで小兵衛と大治郎とついでにおはるしか、いつも印象がないもんだから、三冬が出てくると、“ああ、そういやあいたな”という冷遇さ…。
三冬もねー 男装の麗人ってことでいいんだけど、小兵衛が好きってところが、おじさんたちの浪漫が出てる感じがして、どうも頂けないんだよね~

それはさておき(二回目)。
三冬は山崎屋の一人娘が誘拐されているところに遭遇する。もちろん彼女の剣でもって山崎屋の娘を助けるのだが、その後の山崎屋がどうもおかしい。
小兵衛に相談して、また小兵衛が事件解決に身を乗り出すのだが、どうやら誘拐自体は、山崎屋の娘の父親、つまり主人が起こしたものだったらしい。
その主人は婿養子で、先代の主人、今はご隠居さんに操られる生活はもう嫌だ、ということで、そんな父親に賛同する娘と共に出奔しようとしていたのだった。

「妖怪・小雨坊」

小兵衛と大治郎の周りに、妖怪・小兵坊によく似た不気味な男が現れる。
小兵衛が調査してみると、なんと前の話で大治郎が腕を切った、三弥の兄らしいのだった。
不気味な姿で産まれてしまった兄は、家から追い出され江戸も追い出されてしまっていた。ただ三弥だけが慕っており、いまだに親交があった。そんなもんだから、三弥の腕が斬り落とされたとなったら、兄は黙っていられない。

その複雑な生い立ちにより屈折してしまった兄は、ひと思いに小兵衛や大治郎を殺すのではなく、じわじわ殺そうとし、その一環で小兵衛の家を焼いてしまう。
最終的には、もちろん小兵衛が勝ち、兄は討ち死に。三弥も師匠でも愛人でもあった柿本の家で自殺を遂げたのであった。

「不二楼・蘭の間」

家が焼けてしまったもんだから、不二楼にて厄介になることになった小兵衛。
ある日、男女の密談を盗み聞きしてしまう。何やら不穏な会話で、守銭奴で有名な武士親子を殺そうとしているみたいなのだ。その武士・横川鉄五郎自体は小兵衛も疎ましく思っているのでいいが、その養子である小金吾は非常に不憫な生活を虐げられていたので哀れに思う。
結論から言うと、二人が殺そうとしていた横山は、生活に耐え切れなくなった小金吾が殺してしまい、小金吾は姿をくらます。

池波正太郎 「剣客商売全集 第一巻」 1992年 新潮社

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